対数量(と情報量)の単位 ℧₁ の細かい話

数学で最も美しい式として時々話題になるのが、

 e + 1 = 0

です。加法と乗法の単位元である 0 と 1 に加え、虚数単位 i、
さらには e と π という最も著名な超越数からなりたち、
i と π は乗法、e と iπ は冪乗、e と 1 は加法で繋がり、
最後にそれらからなる左辺が右辺の 0 と等号で結ばれる。

遡ると、この等式は、

 e = cos θ + i sin θ

の θ = π の場合です。

つまり、三角関数は虚軸方向の指数関数と解釈できる。

ここ↑までが本日の話題の前置きで、単位記号をどうするか↓が
今日の本題。

実は、tables.pdf の radian の説明に、なぜ、

 (2/π) arc sin(1)

と、一見、恒等式のような記述を書いたかというと、arc sin(1)
を“有理単位”全円周平面角(Ω1)の 1/4 とすると、“非有理単位”
radian は、その (2/π) 倍に当たるという趣旨を示したかったのです。

ここで、ずっと悩んできたのは、対数量・情報量の“非有理単位”neper
に対応する“有理単位”にどのような単位記号を与えるか?

これまでは、桁数(figure)を意味する“f”を単位記号として、

 fk = log(2k),  k = 1(bit), d(figure), 4(nibble), 8(byte),…

と定義してきたのですが、“f”では一般的すぎて、ピンとこない人も多そう。
この問題は、長らく未解決だったのですが、先日、ふと前置きの関係式と
この問題を関連付けられることに思い至りました。

三角関数が虚軸方向の指数関数と解釈でき、平面角の“有理単位”(Ω)と
“非有理単位”が逆三角関数で関連付けられるのであれば、実軸方向の
逆指数関数である対数の“有理単位”は記号 ℧ で表現するのが自然である。
[1]

対数量の“有理単位”は、平面角におけるΩと同じ位置づけを ℧ が担うべき。
気がつけば、元々これ以外の選択肢がなかった[2]ように感じるから不思議です。
℧ は、まったく別の目的であらかじめ用意されていた記号であり、その元の
用法は普遍単位系と衝突しない時期に自然に廃れていった。まるで、構造の
側がこの記号を“空けて待っていた”かのような一致です。

次の改訂では、対数量・情報量の“有理単位”は、

 k = log(2k),  k = 1(bit), z(figure), 4(nibble), 8(byte),…

としようと考えています[3]

[1] 単位の扱いとしての、平面角と対数量の双対性については、大昔、
univunit-j.pdf のA.2で議論しました。
[2] インピーダンス(Ω)と対になるロールの球面全立体角をΩ2とした結果、
  円周全平面角をΩ1としたのが、今回の考察とは無関係だったのにびっくり。
[3] ついでに改訂する(12進における 1 digit) z(旧d)は log2(12.) です。
  よって、2024-07-16 b1.58 の主題値(trit?)は ℧z-2 と表すことができます。
  なお、対数量としては ℧1 ≒ 3 dB です。

[関連記事] 2026-01-12 物質量の単位 mol の細かい話

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