寛政暦の歳実(つづき)

 2021-08-02 7月アクセス

| この件については、さらに精査を進めていて、もう少し
| 確認したところで、別途記事にしたいと思っています。

今回はその別記事です。

 2021-07-25 寛政暦の歳実

| 確認したところ前者は麻田剛立の計算式、後者は最終的
| に寛政暦が採用した計算式であるため微妙にずれる。

ずれの大きさを確認すると消長法による回帰年の長さの変化のちょうど5年分。
このことを考慮して試行錯誤し、Gist↓

https://gist.github.com/suchowan/a696cdf3bfa81f0f058cbaea1aac29a7

のようなスクリプトを書いて計算してみると、

 1827 120 : 消長あり 癸卯 - 寅 0 (5.11) : 消長なし 癸卯 - 丑 8 (8.31)
 1829 150 : 消長あり 甲申 - 丑 1 (0.03) : 消長なし 甲申 - 丑 0 (9.86)
 1830 300 : 消長あり 辛酉 - 午 2 (0.04) : 消長なし 辛酉 - 午 1 (9.85)
 1832 90 : 消長あり 戊戌 - 亥 3 (0.05) : 消長なし 戊戌 - 亥 2 (9.85)
 1833 240 : 消長あり 丙子 - 辰 4 (0.06) : 消長なし 丙子 - 辰 3 (9.84)
 1835 30 : 消長あり 癸丑 - 酉 5 (0.07) : 消長なし 癸丑 - 酉 4 (9.83)
 1836 180 : 消長あり 辛卯 - 寅 6 (0.08) : 消長なし 辛卯 - 寅 5 (9.82)
 1837 330 : 消長あり 戊辰 - 未 7 (0.09) : 消長なし 戊辰 - 未 6 (9.81)
 1839 120 : 消長あり 丙午 - 子 8 (0.11) : 消長なし 丙午 - 子 7 (9.80)

となって、

 2014-07-13 寛政暦の二十四節気

の二十四節気の差分と一致させることができました。

ずれの原因は暦法の改訂ではなく暦定数更新の周期にあるようです。

寛政暦では暦定数を10年ごとに更新するようになっていて、暦元の1797年から10年
間は同じ暦定数を使います。このため最初の10年間は、回帰年に1797年の値を使う
のではなく1797年から10年間の回帰年の長さの平均値を使わねばならない。
この計算の便のため歳実には暦元の5年後の値を書いているという事情のようです。[1]

検索してみると、以前このブログにもコメントをいただいたことのあるおまつさんの

「おまつのブログ」
http://omatsuja2.blogspot.com/2020/08/kansei10.html

>一年の長さになるわけだが、寛政暦の暦法に記載された歳周定数 365.242347071日は、
>上記の式に y=5 を代入したものに一致する。つまり、消長法を行ったときに、
>1797~1807年の期間に使用されるその間の平均歳周、すなわち、1802年の歳周に
>合うように暦法定数は記載されているということがわかる。

でも指摘されていました。

今回の知見によって2つの寛政暦を想定する必要はなくなりました。

結果、when_exe Gem の方にも上記 Gist のロジックを下記 Commit で反映[2]し、

https://github.com/suchowan/when_exe/commit/52d5e79dc02aaca85a6ab3aca6733261315a591a

寛政暦[3]をひとつに統一することができました。

[1] この事情の説明はこちらにも反映していただきました。
[2] コメントアウトしていた10年周期のロジックを有効化。
[3] ただし定朔の計算の方は従来通りで正確な実装ではありません。

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