『こよみと天文・今昔』
内田正男『こよみと天文・今昔』で、冬至年が計算されているという指摘が、
>「冬至年」について
http://www.asahi-net.or.jp/~jc1y-ishr/Kyuureki/Touji_Year.html
でなされています。
この本の当該部分でなされていることを列挙すると下記のようになります。
(1)1888年と1982年の冬至の間隔を94で割って太陽年を求めようとした。
(2)例の2621年の計算を行って、「2621年たつと季節とのずれが1日をこえる」とした[1]。
(3)『遠西観象図説』の太陽年の誤差の“誤り”を、分に丸めた後、誤差を計算したためとしている。
(4)『遠西観象図説』の「円環年ノ日時分秒ヲ測ルニ三百六十五日五時四十九分」を
そのまま引用している[2]。
これらについて下記のような推測をしました。
(1)
“「冬至年」について”でも指摘されているように、著者は求めたものが平均回帰年
ではなく冬至回帰年であることに気付かなかったのではないかと思われます。おそらく
偶然なのでしょうが、たまたま94年は章動周期の5倍の95年に近く、章動によるゆらぎ
をキャンセルできるという好条件があるのです。著者は平均回帰年に近い値になると
予想していたら、そうでもなかったので戸惑っているようにも感じます。
(2)
これは『日本暦日原典』出版後、誰かに「2621年」は正しくは「2620年」ではないかとの
指摘を受け、自ら再計算したのではないかと思われます。結果、無条件に切り上げ
を行ったと説明を変更している。仮に指摘を受けたのだとすれば、誤差が1日になる
までの期間だけではなく、2日になるまでの期間も再計算していたのでしょうか?
無条件に切り上げを行ったのではなく、間違った計算結果を引用していたことに
著者本人は気が付いていたのかどうか…。
(3)(4)
これが一番興味深いです。(4)は、著者本人が目で「日時分秒」という文字列を読み、
原稿用紙に手で「日時分秒」という文字列を書いたことを示しています。それでも
三百六十五日五時四十九分が秒まで測った数字だということが頭に入らなかった。
(3)の認識が深い思い込みになってしまっていたため、明らかな反証を頭が受け付けなく
なっていたのでしょう。(1)に見るように、平均回帰年と冬至回帰年の違いについての
知識がなかったことも災いしました。
ここから得られる一般論としての教訓は、
思い込みは怖い
ということ。特に○○さんのミスを想定して、
○○さんは××だ[3]
というのは、そこで思考停止になる危険があって要注意です。
このパターンになっていることに気付いたら一歩立ち止まって考えるのが
良いでしょう[4]。
[1] →2012-08-19 「2621年ノ後一日」の謎
[2] →http://www.asahi-net.or.jp/~dd6t-sg/pcs/5th-proceeding-7000.pdf
[3] 本記事の例では
○○ - 『遠西観象図説』の著者
×× - 初歩的なデータ処理ができない人
[4] 自己言及的ですが、この記事自体がその罠にはまっている可能性が
あるのが怖い所ではあります。
>「冬至年」について
http://www.asahi-net.or.jp/~jc1y-ishr/Kyuureki/Touji_Year.html
でなされています。
この本の当該部分でなされていることを列挙すると下記のようになります。
(1)1888年と1982年の冬至の間隔を94で割って太陽年を求めようとした。
(2)例の2621年の計算を行って、「2621年たつと季節とのずれが1日をこえる」とした[1]。
(3)『遠西観象図説』の太陽年の誤差の“誤り”を、分に丸めた後、誤差を計算したためとしている。
(4)『遠西観象図説』の「円環年ノ日時分秒ヲ測ルニ三百六十五日五時四十九分」を
そのまま引用している[2]。
これらについて下記のような推測をしました。
(1)
“「冬至年」について”でも指摘されているように、著者は求めたものが平均回帰年
ではなく冬至回帰年であることに気付かなかったのではないかと思われます。おそらく
偶然なのでしょうが、たまたま94年は章動周期の5倍の95年に近く、章動によるゆらぎ
をキャンセルできるという好条件があるのです。著者は平均回帰年に近い値になると
予想していたら、そうでもなかったので戸惑っているようにも感じます。
(2)
これは『日本暦日原典』出版後、誰かに「2621年」は正しくは「2620年」ではないかとの
指摘を受け、自ら再計算したのではないかと思われます。結果、無条件に切り上げ
を行ったと説明を変更している。仮に指摘を受けたのだとすれば、誤差が1日になる
までの期間だけではなく、2日になるまでの期間も再計算していたのでしょうか?
無条件に切り上げを行ったのではなく、間違った計算結果を引用していたことに
著者本人は気が付いていたのかどうか…。
(3)(4)
これが一番興味深いです。(4)は、著者本人が目で「日時分秒」という文字列を読み、
原稿用紙に手で「日時分秒」という文字列を書いたことを示しています。それでも
三百六十五日五時四十九分が秒まで測った数字だということが頭に入らなかった。
(3)の認識が深い思い込みになってしまっていたため、明らかな反証を頭が受け付けなく
なっていたのでしょう。(1)に見るように、平均回帰年と冬至回帰年の違いについての
知識がなかったことも災いしました。
ここから得られる一般論としての教訓は、
思い込みは怖い
ということ。特に○○さんのミスを想定して、
○○さんは××だ[3]
というのは、そこで思考停止になる危険があって要注意です。
このパターンになっていることに気付いたら一歩立ち止まって考えるのが
良いでしょう[4]。
[1] →2012-08-19 「2621年ノ後一日」の謎
[2] →http://www.asahi-net.or.jp/~dd6t-sg/pcs/5th-proceeding-7000.pdf
[3] 本記事の例では
○○ - 『遠西観象図説』の著者
×× - 初歩的なデータ処理ができない人
[4] 自己言及的ですが、この記事自体がその罠にはまっている可能性が
あるのが怖い所ではあります。
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