「消長法の研究(I)」の貞享観測精度への言及

消長法の研究(I)」p.84

>  この頃になると,授時消長法による値とニューカム値との間には多少の開きが生じているが,
> いずれも貞享観測の精度の範囲内にまたがり,渋川春海の観測からは,はっきりした結論的数値
> を与えられそうにないにもかかわらず,春海が授時暦(貞享では授時に対し里差の補正を行って
> いるが,他はほとんど同じ)を採用したことから,彼の自己の観測への自信がどの程度であったか
> 察せられる.
> つまり,授時暦の権威に盲従し,その理解に努めるのが精一杯で,自ら観測をしたのも,ただ
> 授時方式に従って体裁を整えただけで,自らの観測によって新しい天文常数を見出すなぞ思いも
> よらなかった.ただ,当時行われていた宣明暦によれば,約2日のずれがあり,観測によって授時の
> 方が良いという信頼度を高める上に役立ったであろう.(ただし授時の日月食計算にはやや批判的
> である).丁度,今日の学生の実習観測のようなもので,自らの観測と授時による理論が一致しな
> ければ,自分の観測の方が悪いのであろうと考える程度の自信しかなかったのである.更に,
> この程度の精度の観測からしては,春海の誇る中国と日本との里差(0.06日)の決定の参考とも
> 為し得なかった.

国立科学博物館企画展「渋川春海と江戸時代の天文学者たち」の掲示と比較すると、ずいぶん
評価が低いように思いますが、ここ50年で研究の進展があったのでしょうか?

冒頭の引用文のような状況で、中心差が、
画像
のようになるとすれば、やはり授時暦とは別の参照理論があったとするのが妥当でしょう。

おそらく春海は自らの観測の精度を客観的に認識していて、天文常数や計算式の採否は、参照した
理論をベースに、主に過去の日月食の推算精度(これは一種のゼロ点キャリブレーション)で決定
していたのではないかと思います。

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