「貞享暦の日行盈縮と定朔」フォローアップ

(1) 貞享暦の日行盈縮と定朔(『日本暦学会』第22号,2015)
と、それの元になった
(2) 2014-03-19「中根元圭の観測
の訂正事項を、本記事でまとめておきます。

(1)固有の訂正事項
 (2)から(1)を作成する際、招差法の式の説明を挿入しましたが、これにより“度”の
 定義が変わったことを見逃しました。連動して(回帰年の日数/360)を掛けるか、
 単位名を識別するか、どちらかにすべきでした。
 (→2015-04-10 角度の単位の不一致)

(1)(2)共通の訂正事項
 現代天文学 M = 88.17度 → υ - M = 1.916 度
 <授時暦>  M = 89.27日 → υ - M = 2.367 度
としていましたが、
 現代天文学 M = 88.80度 → υ - M = 1.915
 <授時暦>  M = 89.91日 → υ - M = 2.367 度
と訂正します。

現代天文学の方は 2014-03-19の記事で、
 υ - M = 2e sin M + 2e2 sin 2M + …
としていたのが、正しくは
 υ - M = 2e sin M + (5/4)e2 sin 2M + …
であったことによるものです。
元の式は『授時暦―訳注と研究―』p.11の式を使ったのですが、これは離心円の場合
の式、楕円の場合は荒木俊馬『増補新版現代天文学事典』p.219 (5)を使うべきでした[1]
今回、数値的にフーリエ変換をしてみて気づきました。

<授時暦>の方は期間範囲外の極値を採用していたのを近日点側と遠日点側の
境界の値に訂正したことによるものです。境界は真近点角90度に対応し、
この点で両側の招差法の式が接続するのですが、極端に表現すると ⋀ の
ようになっており、微分が0になるわけではないのです。

υ - M はほとんど変わらず、論旨に影響なかったのは幸いでした。

[1] 下記文献で両方の式の差を明記しています。
Yukio Ôhashi 'Mathematical structure of the eccentric and epicyclic models in
ancient Greece and India' in "History of the Mathematical Sciences II" pp.83-102.

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