平均律

予定では「三分損益法」に続けて書くつもりだったのですが、他の話題が割り込んだので遅くなりました。
(一日に複数記事を書き込まないことにしたので、こうなりました)

三分損益法のような方法で音階を構成すると、何度も三分損益を繰り返してできる
音は、最初の音との周波数の比が複雑になります。結果、転調をすると和音が濁って
しまいます。また、長3度(5:4)を精確に表現することもできません。

そこで考案されたのが平均律です。

平均律の性能は、周波数が簡単な整数比になるような音の組み合わせをいかに多く
かつ精度良く近似できるかで評価できるわけですが、12平均律はこの点で優秀です。

(a) 最も小さい素数比 2:1
これは1オクターヴそのものですから、厳密に表現できなければなりません。
従って、平均律の周波数の公比は 21/nでなければなりません。
(nは適当な自然数)

(b) 次に小さい素数比 3:1
条件(a)を満たしつつ、この比を効率よく近似するには、
log 3 / log 2 = log2 3 = 1.58496…を最良近似分数で近似すれば良いわけです。
最良近似分数の分母が n の候補となります。
連分数展開[1]して、最良近似分数の系列を求めると、


(c) 次に小さい素数比 5:1
条件(b)で求めた n の候補のうちこの比をも比較的よく近似するものを選ぶと、
n=12、53[2]が残ります。

(d) より大きな素数比
7:1ないしそれより大きな比は人間の耳にとって相対的に重要度が小さいようです。

と言うわけで、実用的な平均律としては12平均律しか残らないのです。

いろいろな平均律を比較したリストを下記に置きました。
http://www.asahi-net.or.jp/~dd6t-sg/pcs/EqualTemperament.xls

[1] 三分損益法の話で 12 や 53 が出てきましたが、連分数を使うと見通しがよいのです。
  連分数と最良近似の関係については高木貞治『初等整数論講義』がよい教科書です。
[2] 19世紀にT. Perronet Thompson や R. H. M. Bosanquet といった人たちが53平均律用の鍵盤を
  試作したという例はあるようです。53という数は一年の週の数とおなじく源氏物語の帖数とあうので、
  「ISO8601暦週」に書いたように源氏物語の帖名と対応付けるのも面白いかもしれません。

# 明日分へつづく

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