日時計は何を測れるか?

機械時計が普及する前、人々は夜明け・日暮れを基準に、その間を6等分し「不定時法」で生活していました。
そこで、ふと当時も使用することができた日時計ではどうだったのだろう?
「日時計は何を測れるか?」と疑問に思いました。

日時計が直接測るのは、垂直に立てた長さ L の棒の先端の影の位置(X:東向き,Y:北向き)です。

これは次の式で、地平座標(h:高度,A:北から東向きに測った方位角)に対応します。
 h = atan(L / (X2 + Y2)1/2)
 A = atan2(-Y, X)

日時計の設置場所の緯度(φ)が分かっていると、太陽の赤道座標(δ:赤緯,H:時角)が分かります。
太陽の時角とは、太陽の赤経と南中している子午線の赤経の差で、これは地方真太陽時での現在時刻と
正午との時間差に対応します。

 sin δ = sin φ sin h + cos φ cos h cos A
 cos H = (cos φ sin h - sin φ cos h cos A) / cos δ
     = (sin h - sin φ sin δ) / (cos φ cos δ)

H を一定にしつつ δを±23.44度の範囲で変化させ、XとYを逆算した結果得られる曲線を日時計の
まわりにプロットすれば、それが地方真太陽時の時刻を示す目盛りになります。

最後の式の h に寛政暦の夜明け・日暮れの定義に基づく太陽高度である-7度21分40秒を代入して
得られる時角を H0とすると、不定時法での昼九つとの刻数差は、

 H / H0 × 3

となります。この値を一定にしつつ δを±23.44度の範囲で変化させ、XとYを逆算した結果得られる
曲線を日時計のまわりにプロットすれば、それが不定時法の時刻を示す目盛りになります。

地方平均太陽時は地方真太陽時に均時差を補正して求めます。均時差は時間の関数ですが、残念なことに
太陽の赤緯に関して2価です。つまり、冬至→夏至の期間と夏至→冬至の期間では、太陽の赤緯が同じでも
均時差は異なります。(例えば http://www.mysundial.ca/tsp/time.html の Figure. 3)

現在が冬至→夏至の期間に含まれるなら、太陽の赤緯δから均時差による補正値が一意に決まりますから、
H をその補正値で補正したものを一定にしつつ δを±23.44度の範囲で変化させ、XとYを逆算した結果
得られる曲線を日時計のまわりにプロットすれば、それが冬至→夏至の期間用の地方平均太陽時の時刻を
示す目盛りになります。同様にして夏至→冬至の期間用の目盛りも作れます。

結局

 1. 地方真太陽時
 2. 不定時法の時刻
 3. 地方平均太陽時(冬至→夏至)
 4. 地方平均太陽時(夏至→冬至)

用の4種の目盛りをプロットしておけば、これらをすべて日時計で表示可能という結論です。[1]

また、
 A . 冬至→夏至用の目盛り (1,2,3 + 日付)
 B . 夏至→冬至用の目盛り (1,2,4 + 日付)
を夏至と冬至に入れ替えて、カレンダーとして使うことも可能です。[2]
だからマンハッタンヘンジは夏至の前後に各1日なんですね。

[1] 日時計だけを見て、現在が冬至→夏至・夏至→冬至どちらの期間かを知る術はありませんから、
  厳密に言えば、日時計では平均太陽時は測れないというべきかもしれません。夏至の前後の各1日の
  マンハッタンヘンジの際、太陽の作る影は同一で真太陽時も同一です。しかし、夏至の前後で均時差が
  異なるので、平均太陽時は同一にはなりません。
[2] 太陽の視直径が1/2度あって半影のせいで影がぼけますから、日単位のカレンダーは難しいでしょう。

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